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事例紹介

2023.09.15

観念類似に関係する審決例 [弁理士 服部 京子]

観念類似に関係する審決例 [弁理士 服部 京子]

 少し前とはなりますが、久しぶりに観念類似に関係する審決がありましたのでご紹介します。

【種別】   拒絶査定不服の審決
【審判番号】 不服2022-13036
【本願商標】 オーラルパフューム

3類「かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つけまつ毛用接着剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,口臭消臭スプレー,小片状の口臭消臭剤,歯磨き,洗口液,口内洗浄剤(医療用のものを除く。),歯の漂白用ジェル,化粧品,香料,薫料,つけづめ,つけまつ毛」

【引用商標】 お口の香水

引用商標1:第5870848号

3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,動物用防臭剤,せっけん類,化粧品,薫料,つけづめ,つけまつ毛」
第5類 省略

引用商標2:第5950086号

3類「口臭用消臭剤,口中清涼剤,入れ歯洗浄剤,歯磨き」

引用商標3:第5971481号

30類「食品香料(精油のものを除く。)」他

【適用条項】 4条1項11
【結論】   本件審判の請求は、成り立たない。

本願商標について(下線は筆者、以下同様)
その構成中、「オーラル」の文字は「口の。口頭の。口述の。」の意味を有する語として、「パフューム」の文字は「香水。パヒューム。」の意味を有する語(いずれも「広辞苑 第七版」岩波書店)として、それぞれ一般に慣れ親しまれた語であるものの、これらを結合した「オーラルパフューム」は成語となるものではなく、その意味合いも漠然としており、当該文字から直ちに特定の意味合いが想起されるとは認め難いから、本願商標は、特定の意味合いを有しない一連の造語を表したものと理解されるとみるのが相当である。

 そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して、「オーラルパフューム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

引用商標について
その構成中、「お口」の文字は、「動物が体内に食物を取り入れる場所。」等の意味を有する「口」の丁寧語であり、「香水」の文字は「よい香りのする水。化粧品の一つ。」等の意味を有する語(いずれも前掲書)として、それぞれ一般に慣れ親しまれた語であるものの、これらを格助詞「の」で結合した「お口の香水」は成語となるものではなく、その意味合いも漠然としており、当該文字から直ちに特定の意味合いが想起されるとは認め難いから、引用商標は、特定の意味合いを有しない一連の造語を表したものと理解されるとみるのが相当である。

 そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「オクチノコウスイ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

本願商標と引用商標の類否
両者は、文字種が明らかに相違するものであるから、両商標は、外観上、明確に区別できる。

 また、本願商標から生じる「オーラルパフューム」の称呼と、引用商標から生じる「オクチノコウスイ」の称呼とは、語調、語感が明らかに異なるものであるから、両商標は、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。

 さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。

 そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明らかに異なるものであるから、これらを総合して判断すれば、両者は、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。

 審判においては、いずれも造語であるとしてさらっと流されておりますが、審判で審理されているということは審査段階では両商標は類似と判断されて拒絶査定が出ているということです。そのため、今回は拒絶査定の概要も併せてご紹介したいと思います。

【拒絶査定の内容】
本願商標について
本願商標は、「オーラル」及び「パフューム」の各文字を結合してなるものと容易に認識、把握されるものであるところ、当該各文字は、それぞれ、「〔oral〕口の。口頭の。口述の。」及び「〔perfume〕香水。パヒューム。パルファン。」の意味(「広辞苑第7版」岩波書店)を有する語であって、出願人も認めるとおり、いずれも一般に広く親しまれ日常語化しているといえるものですから、その構成文字全体からは「口の香水」の観念が容易に生じるものと認められます。

引用商標について
いずれも「お口の香水」の文字を標準文字にて表示してなるものですから、その構成文字に相応して「オクチノコウスイ」の称呼が生じ、また、「口の香水」の観念が容易に生じるものと認められます。

本願商標と引用商標の類否 
  本願商標と引用各商標とを対比すると、外観及び称呼については、それぞれ上記のとおりであって相違していますが、観念については、いずれも「口の香水」であって同一のものです。

 そうすると、本件商標と引用各商標とは、外観及び称呼において類似するとはいえないものの、観念が同一であって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、同一又は類似する指定商品に使用した場合に、商品の出所につき誤認混同されるおそれがあるというべきです。

 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当します。

 以上のとおり拒絶査定においては、両商標ともに「口の香水」なる観念が生じるとして、類似との判断がされております。英語/日本語の言語が違うだけと言われればそうかもしれませんが、なかなか厳しいようにも思います。

 なお、同一出願人による「オーラルフレグランス」についても、審査段階においては、「口の芳香化粧品(香水)」の観念が容易に生じるとして、引用商標から生じる「口の香水」の観念ときわめて類似するとの判断がされ、審判段階において登録が認められました(不服2022-13037)。

 観念類似をメインの理由とする審決は色々ありますが、観念が共通しているかの判断については(明らかに共通する場合を除き)、主観的要素が多分に含まれるのではないかと感じることも多く、判断が難しい部分です。

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