TRADE MARK TOPICS

事例紹介

2023.07.15

前後置換商標の類否判断(商標法4条1項11号)[弁理士 清水 三沙]

前後置換商標の類否判断(商標法4条1項11号)[弁理士 清水 三沙]

本件は、本件商標「Swan Angel」(登録第5947687号)と引用商標「ANGEL SWAN」(登録第5509646号)の前後置換商標が無効審判において類似と判断されて、本件商標が無効となった事件です。

【審判番号】無効2022-890031
【審判請求日】令和4年5月9日
【確定日】令和5年1月10日
【請求人】有限会社 エストミール
【被請求人】小野ひろみ

【事件の背景】
引用商標「ANGEL SWAN」(第41類)の商標権者が、本件商標「Swan Angel」(第41類)に対し、本件商標と引用商標は「天使」及び「白鳥」の意味合いを有する英語として親しまれている「ANGEL」と「SWAN」の語を組み合わせたものであって、本件商標と引用商標は単に「ANGEL」と「SWAN」の語が前後に入れ替わっているに過ぎないことから、本件商標と引用商標は称呼及び観念において相紛れるおそれのある類似の商標であり、本件商標は商標法4条1項11号に該当するとして無効審判を請求しました。なお、両商標の指定役務は類似します。
本件商標の商標権者は答弁は行っておりません。

【当審の判断】
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
 本件商標は、前記第1のとおり、「Swan」と「Angel」の文字の間に1文字分程度の間隙を設けて標準文字で表してなるものである。

 そして、構成中の「Swan」の文字は「ハクチョウ(白鳥)」(ジーニアス英和大辞典 株式会社大修館書店)の意味を、「Angel」の文字は、「天使」(同掲書)の意味を、それぞれ有する語として、一般に親しまれている平易な英単語であるところ、その組み合わせ全体をもって、既成の語として辞書類に載録されているものではなく、特定の意味合いを想起させる語として、本件商標の指定役務に係る取引者、需要者の間に認識されているものでもない。

 また、これら両語は、その意味合い又は語法上において一方が他方を修飾するというような主従・軽重の差は見いだせないから、本件商標は、単に上記2語を組み合わせたにすぎないものというべきである。

 そうすると、本件商標は、「白鳥」と「天使」の観念を理解させるものであり、構成文字に相応して「スワンエンジェル(エンゼル)」の称呼を生じるものである。

(2)引用商標
 引用商標は、前記第2のとおり、「ANGEL」と「SWAN」の文字の間に1文字分程度の間隙を設けて標準文字で表してなるところ、上記(1)と同様に、「ANGEL」の文字は「天使」、「SWAN」の文字は「ハクチョウ(白鳥)」の意味をそれぞれ有し、両語に、主従・軽重の差は見いだせないから、本件商標は、単に上記2語を組み合わせたにすぎないものというべきである。

 そうすると、引用商標は、「天使」と「白鳥」の観念を理解させるものであり、構成文字に相応して「エンジェル(エンゼル)スワン」の称呼が生じるものである。

(3)本件商標と引用商標の類否
 本件商標と引用商標とを比較するに、両商標は、上記のとおり、共に一般に親しまれた平易な英単語である「Swan(SWAN)」と「Angel(ANGEL)」の2語からなるものであって、両商標に接する取引者、需要者は、該商標を構成する各文字が単に前後に入れ替わってなるにすぎないものと認識し、把握するとみるのが自然である。

 そして、本件商標と引用商標とは、「Swan(SWAN)」と「Angel(ANGEL)」の各文字とが、その配列において前後の違いはあるとしても、その相違によりそれぞれが一連の熟語的意味合いを有する語として別異の観念を生ずるというような事情は認められない。

 また、両商標は、外観において文字の前後及び大文字と小文字の差異を有するとしても、それぞれを構成する2語は、いずれも親しまれた「swan」と「angel」の英単語であり、ありふれた書体で一連に横書きされているから、別異であるとの印象を与えるほど構成上の顕著な差異があるものではなく、両商標に接する取引者、需要者は、これらの文字の配列を常に正確に記憶に留めて、それぞれを識別するというよりは、むしろ、それぞれの前後に関わりなく、「白鳥」と「天使」の観念、「スワン」と「エンジェル(エンゼル)」の称呼の組み合わせからなる商標として印象づけられるものとみるのが相当である。

 そうすると、本件商標と引用商標とを時と処を異にして隔離的に観察した場合は、いずれもありふれた書体の欧文字で一連に表されていること、「Swan(SWAN)」と「Angel(ANGEL)」の2語で構成されていることを共通にし、「天使」及び「白鳥」の観念を同じくすることから、外観及び観念において相紛らわしいものであり、かつ、称呼においても「エンジェル(エンゼル)」と「スワン」のいずれの語が前又は後に配置されていたかが曖昧となり、相紛れるおそれが少なからずあるものといわなければならない。

 してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、観念及び称呼において互いに紛らわしいものというべきであるから、両者はその出所について混同を生ずるおそれのある類似のものと判断するのが相当である。

【コメント】
 前後置換商標は、それぞれの商標からどのような観念が生じるのかが類否判断の結論の影響を与えます。

 例えば、「WORLD TREVEL」と「Travelworld」(不服H04-15058)は、「WORLD TRAVEL」からは「世界旅行」の意味が生じるのに対し、「Travelworld」からは特定の観念が生じないとして非類似と判断されています。

 一方、「おさんぽペンギン」と「ペンギンのお散歩」(異議2007-900013)では、両商標からは「散歩するペンギン」を想起させるとして類似と判断されています。

 では、本件はどうでしょうか。本件商標「Swan Angel」も引用商標「ANGEL SWAN」も、審決で述べられているように「ANGEL」と「SWAN」の両語に一方が他方を修飾するような主従・軽重の差は見られませんが、必ずしも「白鳥と天使」というような意味合いが生じるとは言い切れず、両商標からは直ちに特定の観念が生じないことを考えますと本件商標の商標権者が反論を行っていれば非類似の結論が出たのではないかとも思いました。

お問合わせ