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豆知識

2024.06.15

商標Q&A 第9回 広告について

商標Q&A 第9回  広告について

Q:当社の新しい製品やサービスに使う商標を出願しようと思います。この商標はウェブサイト上の広告でも使いますので、第35類「広告業」についても登録する必要がありますでしょうか?

A:いいえ、自社の製品やサービスに関する広告に商標を表示させるだけであれば、第35類「広告業」に関する権利化(商標登録出願)は不要です。以下、理由をみていきましょう。

商標とは、「業として」、つまり相手から対価を得て、商品を譲渡(販売)したり役務(サービス)を提供したりする際に使用する標章(マーク)のことをいいます(商標法2条1項)。では、ご質問のように”自社の新製品に関する広告をネットに出す”場合、この広告という行為に対して他人から対価をいただきますでしょうか。逆ですよね。通常は広告に必要なお金を払って新製品の宣伝を行います。つまり、ご相談者様は自らの標章を業として広告業に使用していないことになりますから、権利化は不要ということになります。これはネットに限ったことではなく、例えば駅前の広場でポケットティッシュに標章(マーク)を付して宣伝目的で道行く人々に配布する場合に、第16類「ポケットティッシュ」について商標登録をしなければならないかというと、こちらもポケットティッシュを有償で(手渡した人から対価をもらって)配布しているわけではありませんので、ポケットティッシュに関する商標登録は不要ということになります。

では、話を戻しまして、広告代理店の場合はどうでしょうか。「いろは広告社」のクライアントであるA社さんが新製品に関する広告をネット上で行いたいという希望をお持ちである場合、「いろは広告社」さんはA社さんの広告物を作ったり、広告の代理をおこなったりして、A社さんから広告費用をいただきますよね。この広告代理店は「いろは広告社」という看板(標章)を掲げて業として広告業を行っておりますので、この「いろは広告社」という商標を登録すべき分野こそが第35類「広告業」ということになります。

従前は第35類の広告業を示す役務の表示は「広告」とされておりましたが、自社の製品やサービスの広告を行いたい出願人が勘違いをして第35類「広告」を指定するケースが後を絶たなかったこともあり、業務として他人のために行う広告であることがわかりやすい「広告業」へと表現が変更された経緯があります。役務の英語表現をみていると、よく「for others」という文字を目にしますが、これは「自分のためではなく、他人のためにしてあげること」であることを明確するために付されます。例えば、「インターネット上での広告」については、英語で「Advertisement for others on the Internet」と表現しますが、これなどは自社のための広告ではなく、他人のために(for others)行うインターネット広告、という意味合いになります。

今回は「広告」についてフォーカスして解説させていただきましたが、ほかの役務(サービス)などでも同じことが言えます。例えば、メーカーであれば製品の開発を行いますよね。第42類に「製品開発」などがありますが、「我が社も製品開発を行っているから、第42類について自社の標章(マーク)を商標として登録しておこう!」というのは少々勿体ない話です。この「製品開発」を英語で書くと「Product development for others」となりまして、つまり、他人から対価を得て、他人のために(for others)製品を開発してあげるサービスなんですよね。他人の製品の開発だけを請け負ったり、他人のために技術の研究を行ったり、製品の試験を行ったり、そういう「他人のために」する技術的なサービスが42類に含まれます。自社の製品を開発したり試験したりするのであれば、他社からお金をいただくわけではありませんから、第42類への権利化は不要、ということになる訳です。

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