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豆知識

2024.05.15

商標Q&A 第8回 悪意ある商標出願への対応

商標Q&A 第8回 悪意ある商標出願への対応

Q:当社の商標を悪意ある第三者が勝手に商標登録出願してきました。どうすればいいでしょう。登録まで待って異議を申立てればよいでしょうか。

A:急いで情報提供(刊行物等提出手続)を行うことをおすすめします。また、残念ながら登録に至ってしまった場合には、商標登録の無効審判を請求することが可能です。

おっしゃるとおり、登録された商標に対しては、登録後一定期間(正確には、商標公報の発行の日の翌日から起算して2月以内)、「商標登録異議の申立て」という手続きを行うことができます。しかしながら、異議というのは特許庁の審査官による登録査定という行政処分に瑕疵(判断の誤り)があったのではないか、という申立てですから、戦う相手は悪意ある出願を行った者ではなく、行政処分を行った「特許庁」になってしまいます。諸外国においては、登録を認める前に「この商標を登録しようと考えますが、異議のある人はいますか?」という告知(公告)がなされ、異議の受付がなされるのが一般的であるのに対して、日本においては、登録を認めてしまってから、「この商標を登録しました。異議のある人はいますか?」と事後報告的に異議を受け付ける流れになっています。後者(日本)の場合、一旦は登録を認めてしまっている訳ですから、そう簡単にはその処分は覆らず、日本における異議申立ての成功率も低いものとなっています。

では、どうするか。登録処分が下される前に、担当の審査官に「この商標は登録されるべきではありません。なぜなら…」という情報や証拠を自発的に提出するのが効果的、ということになります。提供された情報を審査に活かすかどうかは審査官の裁量ですが、審査官が気づいていない当事者間の事情(特に、悪意による出願の場合、出願の行為が商道徳に反するようなものであることの証拠など)を伝えることができれば、審査官によって出願が拒絶される可能性を高めることができます。加えて、この情報提供(刊行物等提出手続)は特許印紙料がかからないことと、代理人費用についても異議申立や無効審判請求などに比べて安価な場合が多いため、費用負担の面でもメリットは大きいといえます。

情報提供を行った後に残念ながら登録になってしまった場合、上述の通り、異議申立てを行うこともできますが、相手が特許庁&成功率が低いことから、悪意出願の事案においては、異議よりも無効審判を請求するほうが成功率は高くなる傾向にあります。無効審判の場合は、当事者対立構造をとりますから、悪意ある出願人(商標権者)を被請求人として戦いの場に引っ張り出せますし、もし、こちらからの審判請求に対して被請求人が答弁せずに無視すれば、こちらに有利な審決が出やすくなります。

情報提供を行う上で注意すべき点は「時間」です。悪意の商標出願に対して有効な手段ではあるものの、審査が終わってしまうと(登録査定が出てしまうと)、情報提供はできません。すごく「ずるい」相手が商標法を悪用して貴社の大切な商標を無断で出願してきたような場合は、審査官が登録の処分を下す前に情報提供ができるかどうかが一つの重要なポイントとなってきます。お困りの際は速やかに弊所へご相談くださいね。

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