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豆知識

2026.07.15

【商標Q&A 第33回:ライバル企業の商標を登録してもいいですか】

Q:当社は、大阪のミナミで昔から「たこ焼き屋」を経営しています。今度、当社の「たこ焼き屋」のすぐ近くに、東京資本の企業が「たこ焼き屋」を新たにオープンさせるという噂を聞きました。正直いって商売の邪魔になるので、その企業の「たこ焼き屋」の店名を先に商標登録してやろうと思っているのですが、知り合いの社長から、「それはさすがにアウトじゃない?」と言われました。こちらとしてはすぐ近くで同じ店を出すというような「お行儀の悪い」ことをされると死活問題ですし、商標は早いもの勝ちと聞いていますので、その店の商標を先に登録して出店を阻止することは合法だろうと思っています。どうでしょうか?

A:同じ「たこ焼き屋」がすぐ近くに出店してくるとなると、それは確かに死活問題でしょうし、とても気になりますよね。では、その店がまだ商標を登録していないことを奇貨として、その業務(新規出店)を阻止するために当該他人の店舗名称を商標として先取り的に登録してしまうことは許されるのでしょうか。答えは「否」であり、このような行為は許されるものではありません。たとえ商標として登録できたとしても、その東京資本の企業から商標登録無効の審判を請求されますと、商標法4条1項7号(公序良俗違反)の規定により、登録が無効とされる可能性があります。

 まず、大前提として、商標法というものがなぜ存在するのかを考えてみましょう。商標法は、「商標の使用をする者の業務上の信用の維持」を図り、もって「産業の発達」に寄与することを目的としています。決して、「他人の商標を先取りすることで競合他社の業務の阻害」を図ることを目的にはしていません。自ら運営する「たこ焼き屋」の店舗名称を商標として登録することは当然ながら商標法の立法趣旨に合致しますが、他人の「たこ焼き屋」の店舗名称を自らの商標として登録し、これをもって他人の業務を阻止しようと企てることは、取引秩序を乱すものであり、商標法の立法趣旨に反する行為であるといえます。

 商標法においては、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」については商標登録を受けることができない旨が規定されております(商標法4条1項7号)。では、ここでいうところの「公序良俗を害するおそれ」のある商標とはどのような商標をいうのでしょうか。

 まず、商標を構成する文字や図形自体が矯激卑猥であったり、非道徳的・差別的であったりする場合が挙げられます。最も典型的な公序良俗違反ですね。ただ、実際には商標法でいうところの公序良俗違反の概念はもっと広く、国際信義に反するような商標や、他の法律によって使用が禁止されているような商標に加え、商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるような商標についても、同号に反するものとして扱われます。例えば、他人が商標を登録していないことを奇貨として、図利加害等の目的(不正の利益を得たり、他人の業務を害したりする目的)をもって、剽窃的に出願(他人の商標をあたかも自分の商標であるかのように出願)するような行為も含まれます。具体的には、他人の「たこ焼き屋」の店舗名称であることを知っていながら、自らの商標として登録し、その後、商標を返してほしければ5億円支払え、というように法外な値段でライバルの「たこ焼き屋」へ買い取りを迫ったり(図利目的)、商標権侵害であることを周囲に吹聴したり脅迫的・威圧的な言動を繰り返すことで業務を妨害したり(加害目的)することは、明らかに商道徳に反する行為であって社会的相当性を欠くと判断され、同号に該当することを理由に登録が無効となる可能性があります。

 商標は確かに「早く出願したもの勝ち」の制度ではありますが、あくまでも出願人が使用する商標を登録することにより保護する制度であって、法の趣旨に反するような他人商標の抜け駆け的出願行為までをも許容する制度ではありません。

 逆に、ライバル企業に商標を取られ、嫌がらせを受けて困っている…というような方がいらっしゃいましたら、公序良俗条項をもって戦う余地がありますので、諦めずに当所へご相談いただければと思います。

※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。

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