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豆知識

2024.04.15

商標Q&A 第7回 商標権の効力とは

商標Q&A 第7回  商標権の効力とは

Q商標「いろは」を登録したいのですが、「イロハ」や「IROHA」といった商標を他人が同じ分野に使わないようにするには、平仮名だけでなく、カタカナやローマ字についても登録しないといけないのでしょうか。

Aいいえ、その必要はありません。実際に使用する商標「いろは」を登録しましょう。今回は商標を登録した場合に生じる効果(商標権の効力)についてみていきますね。

商標は、特定の商品や役務を指定した上で商標登録原簿に設定の登録がなされると、「独占排他権」といわれる商標権が発生します。「独占排他権」とは、字の通り「独占」ができて「他人を排除」できる権利なのですが、では、何について独占ができて、何を排除できるのでしょうか。

まず、商標を登録した者(つまり、商標権者)は、指定した商品や役務について、登録商標の使用をする権利を専有(つまり、独占)できます。ここで注意したいのは、似ている商標や商品等まで独占的に使用できることが約束されていない、という点ですね。商標「いろは」を特定の商品等について登録した商標権者は、商標「いろは」をその指定商品等について独占的に使用できますが、商標「イロハ」や商標「IROHA」まで独占的に使用できますよ、ということは商標法上約束されていません。でも、商標「いろは」が有名になってきたら、関係のない他人がこれに便乗して商標「イロハ」を似たような商品等に使い始めると嫌ですよね。

そういう場合でも大丈夫ですのでご安心を。なぜなら、商標権者は、他人による類似範囲(つまり、紛らわしいほど似ている範囲)の使用を排除することができるからです。例えば、同じ商品に商標「イロハ」を他人が使うことを排除したり、似たようなサービスに商標「IROHA」を他人が使うことを排除したりすることが可能です。

それでも心配だから、自分では使う予定はなくても大切な商標に少しでも似ている商標はすべて登録しておきたい!という方もいらっしゃいます。ただ、商標登録は無料ではありませんからコストが嵩みますし、商標は使用してナンボの世界ですから、使わない商標は他人から不使用を理由とする商標登録の取消審判を請求されると、せっかく商標を登録しても取消されてしまいます。また、特定の商標に「似ている」商標は無数にありますから、似ている商標すべてを先回りして登録しておくことは不可能といってもいいでしょう。

このような理由から、商標は、①実際にご自身が使用する商標を、②実際に使用する商品や役務について、しっかりと漏れなく登録することを心がけるのがとても大事ということになります。その一方で、今回の話の中で出てきた類似の(つまり、似ている)商品等や商標とはどういうものなのか、という点は、また次回以降でお話しましょう。

そうそう、最後にもう一つだけ付け加えておこうと思います。原則として自分が使う商標を登録する、と書きましたが、例えば、自分では登録商標「いろは」しか使わないけれども、商標「イロハ」を使いたい人から商標の「使用権」(つまり、ライセンスですね)が欲しい、との連絡を受けた場合はどうすればよいでしょうか。商標は、登録した商標そのものしか「使用してよい」とのお墨付きを貰っていませんし、他人に対しても与えることができませんから、他人が商標「いろは」を使うことについてはライセンス供与できますが、類似する範囲である商標「イロハ」については、「使っていいよ」というライセンスを供与することはできず、商標「イロハ」をあなたが使っても私達は文句をいいませんよ(つまり、排他権を行使しませんよ)という言い方にとどまります(いわゆる、不争契約というものです)。でも、これだと相手さんは少し不安になりますよね。そういう場合は、相手さんが使う商標「イロハ」を登録してあげて、その上で専用使用権などを設定してあげると、相手さんは安心して商標「イロハ」を使うことができるようになります。これを「ライセンスバック」(こちらの名義で他人が使用したい商標を登録してあげて、ライセンスを当該他人に供与する方式)といい、このように自分が使う商標以外のものであっても理由があれば登録する場合もあります。少し難しい話でしたが、頭の片隅にでも入れておいていただけたらと思います。

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