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豆知識
2023.12.15
商標Q&A 第3回 二段書き商標とは何ですか? その①
Q:「ABC\エービーシー」というようにローマ字とカタカナを上下二段に書いた態様からなる商標を目にします。「ABC」と「エービーシー」を別々に登録してはいけないのでしょうか。
A:いいえ。読みが同じ商標を同じ出願人が2つ登録することは可能ですから、無理に上下二段に文字を並べて1つの商標として登録しなくても構いません。ただし、登録する商標が1つから2つに増えると、単純に費用も倍になります。いわゆる「二段書き商標」と呼ばれる商標について、メリットやデメリット、留意点などを何回かに分けてみていくことにしましょう。
商標登録を希望する場合、特許庁へ「商標登録願」(いわゆる「願書」)を提出しなければなりません。ところが、この願書には注意点がありまして、商標の読み方を書く欄がないんですよね。J−PlatPatという公開データベースをご覧になったことがある方は、「あれ?商標の書誌データをみると、【称呼(参考)】という欄があって、そこにいくつか読み方が書かれているけど…」と思われるかもしれません。これは(参考)と書かれていることからもわかるように、あくまでも商標を検索しやすくするためのキーみたいなもので、必ずしも出願人が意図した商標の読み方が入力されているとは限らないことに注意が必要です。先程述べたように、願書には商標の読み方を書く欄がありませんから、この称呼(参考)に入力されている読み方というものは、需要者がこの商標をみたらどう読むだろうか、という観点から行政サイドの担当者が打ち込んでいるに過ぎません。
そうなると、たとえば「VIOLETTE」という商標を登録したい場合であって、これを「バイオレット」ではなく「ヴィオレット」と称呼して使いたいのだ!という場合はどうすれば良いでしょうか。普通に「VIOLETTE」の文字を標準文字で出願すると、称呼(参考)には「バイオレット」と入力されてしまい、最悪の場合、他人が「ヴァイオレット」という商標を別途登録してしまうかもしれません。そうならないように、この「VIOLETTE」は「ヴィオレット」と読むんだよ、という意思を示すべく、「ヴィオレット\VIOLETTE」というように読み仮名を併記した商標の態様で出願をする訳です。そうすると、間違いなく「称呼(参考)」には「ヴィオレット」と入力してもらえます。
ここまで読まれますと、ローマ字商標には常に読み仮名を振っておけばいいじゃないか(=二段書き商標でいいじゃないか)、と思われるかもしれませんが、そういう訳にはいきません。二段書き商標にはいくつか注意すべきポイントがあるのですが、長くなりますので、デメリットの部分については次回解説したいと思います。