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事例紹介
2026.09.15
テキスタイルデザイン足袋型ソックス流用事件 [弁理士 服部 京子]
テキスタイルデザイン足袋型ソックス流用事件
令和7年(ワ)第3737号 著作権侵害差止等請求事件(大阪地裁)
判決文:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96988.pdf
事件の概要
紳士服、婦人服、子供服、インテリア用品等の輸入・販売を行う企業である原告が、被告が販売する足袋型ソックスについて、原告の著作物を無断で使用したものであるとして、被告に対し、商品の販売等の差止め、廃棄及び損害賠償を求めた事案です。
なお、当該テキスタイルデザインは、原告の依頼を受けて訴外Aが制作したものの一部であり、原告はテキスタイルデザインをウェブサイトやデザイン集の形で公開していました。また、本件各著作物は、A制作に係る著作物として、Aがその著作権を有していたものですが、原告はAから本件各著作物に係る著作権の譲渡を受け、譲渡時点において発生していた本件各著作物に係る著作権の侵害に関する不法行為に基づく損害賠償請求権、不当利得返還請求権その他一切の債権の譲渡も受けています。
一方、被告は、被告商品を中国企業から仕入れた上で、被告サイトで出品・販売していたものの、原告からの通知を受けてすべての商品の販売を中止し、サンプル品として使用した分や既販売分を除いた在庫を中国企業に返品した旨を述べています。


争点1:著作権侵害の成否等について
今回の事案においては、Aのデザインに係る著作物(本件著作物)と被告商品のデザインとは明らかに一致しており、裁判所も以下のとおり認定しています。
本件各著作物と各被告商品を対比すると、本件各著作物がテキスタイルデザインである一方で被告商品は足袋型ソックスである点も含め、具体的な表現方法に差異はあるものの、被告商品1は本件著作物1と、被告商品2-1及び同2-2は本件著作物2と、被告商品3は本件著作物3と、被告商品4-1及び同4-2は本件著作物4と、それぞれ表現の本質的な特徴において一致していると認めることができる。
被告商品は、前記認定事実(1)のとおり、いずれも令和5年10月頃に中国企業のECサイトで販売されていたものであるところ、本件各著作物が遅くとも令和2年の時点で原告のウェブサイト上で公開されていたことに照らせば(前提事実(2))、被告商品が、いずれも本件各著作物に依拠して企画・製造されたものであると認めることができる。
よって、被告商品は、輸入の時において国内で作成したとしたならば、本件各著作物の翻案権の侵害となるべき行為によって作成された物であり、被告が被告商品を輸入した行為は、その翻案権を侵害する行為とみなされる(法113条1項1号、27条)。また、本件被告サイトにおいて被告商品を販売した行為は、翻案物の譲渡による公衆への提供として本件各著作物の譲渡権を侵害する行為であり、被告商品の写真画像を本件被告サイトに掲載した行為は、本件各著作物の公衆送信権を侵害する行為に該当する。
なお、被告商品はいずれも中国から仕入れを行ったものであり、被告が本件著作物を流用して中国での製造をしていたわけではないようです。そのため、本件各著作物の著作権侵害の事実は知って行ったわけではなく故意はなく、通常の注意義務をもって事前調査を行っても、商品全てを確認して権利侵害をしていないことを確認することは不可能であるとして過失がないことも主張していましたが、この点について、裁判所は以下のとおり判断しています。
また、被告は、被告商品の輸入、販売、本件被告サイトへの掲載行為が本件各著作物の著作権を侵害することについて、被告に故意や過失はない旨主張する。この点、被告は、上記のとおり、自ら侵害物品を製造したわけではなく、故意に著作権侵害行為に及んだことを認めるに足りる証拠がないことは確かである。
しかしながら、一般に、衣料品等を輸入して販売することを業として行う者は、輸入する商品が他者の著作権を侵害するか否かについて注意を払うべきであるところ、本件では、インターネットの画像検索を行えば、被告商品と表現としての本質的な特徴が一致する本件各著作物が存在することを確認することもできた(甲37)のであるから、上記著作権侵害について、被告の過失は否定できないというべきである。
よって、被告の上記主張は採用できず、被告は、原告に対し、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
争点2:損害賠償額について
本事件においては、被告が受けた利益の額が原告の受けた利益の額として認定されています。被告の利益額を算出するには、販売数量、販売価格、経費(変動費)が必要になりますが、被告が主張する販売数量75足について、提出された証拠において売上期間や各商品・被告商品の関連性が明らかではなく、最終的には被告商品の販売数量は150足と認定されました。よって、1足あたりの利益額を1,100円(1セット・3足)-経費597円/3=167円として、150足分、2万5,050円が被告の利益額=原告の損害額と推定されました。
なお、原告はテキスタイル事業においては、ミニマムロイヤリティのライセンス料を合意することとしているとして、被告商品の6商品で合計300万円のライセンス料を受けることができたはずと主張しましたが、以下のとおり認められませんでした。
著作物等の使用料として、いわゆるイニシャルやミニマムロイヤリティといった名目で、一定の固定額ないし最低額が約定されることは、一般的に想定されるものであるが、それは、比較的まとまった期間や商品数量の契約関係を前提に、そのコストに見合った売上げないし利益が得られるとの想定のもとで約されるものと解されるところ、本件のように、比較的短期間の数量的にも限定的な侵害行為における損害額の算定で、これを基礎とすることは、その実態に沿った算定方法とはいえない(このことは、上記(1)で算定したような、被告商品の販売によって被告が得た利益の額と対比することで、より明瞭といえる。)。
このような考察に加え、法114条3項にいう著作権の行使につき受けるべき金銭の性質や同項の損害算定上の位置づけ、同条2項にいう侵害者が侵害行為により受けた利益の額との関係などを踏まえて検討すると、本件において、法114条3項に基づいて算定される相当額は、前記(1)で検討した被告の受けた利益の額を上回るものとは認められない。
一方で、損害額の1割が弁護士費用として認められることが多いですが、本事件において弁護士費用は10万円と認定されたため、最終的な損害額は12万5,050円とされています。
最近では、比較的容易にECサイトを立ち上げることができ、既に企画・製造された商品を仕入れて販売するなどの場合も多いと思われますが、本事件を鑑みれば、海外から商品を仕入れた場合であっても、インターネットの画像検索等で権利侵害の有無を確認できるのであれば、輸入者に過失が認められ得ることに留意が必要です。
また、ライセンス料について、裁判所は「比較的まとまった期間や商品数量の契約関係を前提に、そのコストに見合った売上げないし利益が得られるとの想定のもとで約されるものと解される」と判断していますが、被告は著作権侵害行為を指摘された結果、短期間で販売を中止しており、利益額が限定的になったものと考えます。原告の主張するライセンス料が適切であったかはともかくとして、それを裁判所が「被告の受けた利益の額を上回るものとは認められない」としている点については、少々疑問が残ります。
※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。