TRADE MARK TOPICS 商標お役立ち情報
豆知識
2026.05.15
【商標Q&A 第31回:公的な証明マークは商標から外すべきですか】
Q:当社は、国内のイスラム教徒向けにハラール食品の輸入販売を行っております。今般、マレーシアから輸入する商品のラベルをそのまま商標登録しようと思うのですが、ハラルマークが付されており、これを外して登録すべきかどうか悩んでいます。そのまま出願してしまってよいでしょうか。
A:海外の商品に関する国内代理店が、国内で安全に販売を行うために、海外メーカーの許諾を得たうえで商品ラベルそのものを商標登録しておきたいという事案ですね。通常は商品ラベルに表示されている商標の調査などを行った上で出願をすることになりますが、今回のようにラベル上に認証マークなどが含まれている場合は少々注意が必要となります。
まず、本件の場合ですが、以下に示すマレーシア政府の認証ハラルマークであれば外して登録すべきでしょう。当該マークは「マレーシアが用いる監督用又は証明用の印章又は記号」として幅広い商品や役務について経産大臣指定を受けており、これを含む商標を出願すると、実際に販売する商品が実際にハラル認証を受けているか否かに関わらず商標法4条1項5号により拒絶される可能性があります。

同号は、我が国や同盟国等の政府・地方公共団体による監督用や証明用の印章・記号(経産大臣指定を受けているもの)と同一・類似の標章を「有する」商標であって、かつ、同印章・記号が用いられている商品・役務と同一・類似の商品・役務について使用をするものは商標登録を受けることができない旨、定められております。このように、各国の政府や地方公共団体が用いている証明用印章は、たとえ商標として登録がされていないとしても、不登録標章に該当する場合があるので要注意です。
また、その公的マークの証明対象の商品・役務と無関係の範囲については登録ができるのかといえばそこも注意が必要です。例えば、以下の左のマークはブラジル政府がコーヒーについて使用する公的印章ですので(経産大臣指定あり)、コーヒーやこれに類似する商品役務について出願を行うと4条1項5号に該当します(異議2000-91289など)。一方、これに類似する右の商標をコーヒーとは全く無関係の小売役務について出願したところ、4条1項5号には該当しないものの、同項7号(公序良俗)違反を理由に拒絶されております(不服2009-10703)。このように、国内外における公的な証明マークの出願には注意が必要です。


では、政府や地方公共団体といった公的な機関以外の証明用マークについてはどのような扱いになるのでしょう。世界の多くの国ではcertification mark(証明標章)の登録制度を商標法の枠内で設けておりまして、民間の証明用マークについて法的な保護が与えられています。ただ、日本の商標法は残念ながら(この点、どうにかしないといけないと個人的には感じておりますが)証明標章の登録制度を有しておりません。では民間の証明用マークについてはノーチェックでよいかというとそういう訳ではなく、日本においては、証明用の標章が団体商標や一般の商標として登録されている事例もよく見受けられます。そのため、その商品が属する分野において、証明用マークが商標として登録されていないかどうかのチェックも必要、ということになります。
ちなみに、日本では原則として出願後に「商標の補正」を行うと、要旨を変更する補正であるとして補正手続が却下されるのですが、例外的に、商標中の付記的な部分(他に自他商品・役務の識別機能を有する部分があり、かつ、自他商品・役務識別機能を有する部分と構成上一体でない部分)に、「JIS」や「JAS」、「プラマーク」、「エコマーク」といった認証用の文字や記号がある場合、これらを商標から削除することは要旨の変更にはなりません。つまり、規格や証明などのマークというのは、本来的にいえばその商品や役務そのものの出所を表示する標識ではありませんので、ラベル商標を出願するにあたっては、そういった部分は最初から削除しておく、というのも採り得る方策かと考えます。また、本来は商標的に機能するとは言い難い規格や証明用のマークを一律に団体商標や一般の商標の枠組みでしか保護しないという我が国の商標制度自体にも個人的には疑問を感じるところです。
このように、証明用に付される標章(マーク)の取扱いについては、それが公的な認証マークなのか民間の認証マークなのか、商標として機能するものなのかしないものなのか、具体的に特定の商品や役務に紐づいた商標として登録されているものなのか、色々と検討する必要があるため簡単ではありません。悩ましい場合は、ぜひお気軽に弊所へお問い合わせくださいませ。
※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。