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事例紹介
2025.09.15
意匠における文字等の扱い [ 弁理士 德永 弥生]
今回は、意匠に係る物品に表された文字等の扱いに関する審決をご紹介します。
【審判番号】 拒絶2024-006973
【結論】 本願の意匠は、登録すべきものとする。
【原査定における拒絶の理由】 意匠法第3条第1項第3号(新規性欠如)
【本願意匠】
【意匠に係る物品】「吊り下げ飾り」

【引用意匠】「オーナメント」(インターネット掲載)

【原査定の要旨】
・・・両意匠の形状は、どちらも薄い円盤状といえるため、主張された相違の程度は極めて小さく、類否判断に与える影響も小さい。また、本願の物品表面に配置された文字「DREAM COMES TRUE」は、通常用いられるフォントによって表され、特定の情報を伝達するためだけに使用されているものである。意匠審査基準 第3部 第1章 工業状利用することができる意匠 3.2.9 では、専ら情報伝達のためだけに使用されている文字等は意匠を構成するものとは認められない旨を定めており、本願意匠の文字の態様を格別評価の対象とすることはできない。
したがって、・・・本願意匠は引用意匠に類似する。
【当審の判断】
1 本願意匠と引用意匠の対比
・・・
(3)両部分の形状等
両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア 共通点
両部分は、本体を略円板状とし、正面の外縁のやや内側に沿って文字模様を施している点において、共通する。
イ 相違点
(ア)正面の態様について、本願部分は、凹凸のない平板状であるのに対し、引用部分は、外縁に沿って弧条を形成している点、
(イ)模様について、本願部分は、ローマン体を基にした模様であって、時計回りで、12時から3時の位置に「DREAM」、4時から7時の位置に「COMES」、8時から11時の位置に「TRUE」の文字模様を施しているのに対し、引用部分は、手書き風の書体を基にした模様であって、時計回りで、10時から2時の位置に「BABy’s FIRST CHRISTMAS」の文字模様、6時の位置に「2011」の数字模様を施している点、
(ウ)色彩について、本願部分は、形状及び模様からなるものであって色彩は施していないのに対し、引用部分は、本体を白色、模様を赤色に着色している点において、相違する。
2 類否判断
・・・
(3)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
ア 共通点の評価
この種物品の分野において、本体を略円板状とし、正面の外縁のやや内側に沿って文字模様を施したものは、両部分以外にもごく普通に見受けられるものであるから(例えば、日本コカコーラ株式会社が2013年1月14日に公開した「オーナメント」の意匠(公知資料番号HJ24060127)、別紙第3参照)、格別、需要者の注意を引くものとはいえず、共通点が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
イ 相違点の評価
相違点(ア)について、この種、壁に掛けて使用する板状のオーナメントは、正面における態様について、需要者は、特に注意を払うものであるところ、凹凸のない平板状である本願部分と、外縁に沿って弧条を形成した引用部分とは、一見して別異の視覚的印象となっており、需要者に異なる美感を与えるものといえるから、相違点(ア)が、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)について、この種物品の分野においては、オーナメント表面に装飾される模様の多くはメッセージ性を伴い、需要者が最も関心の高いものであるところ、両部分の模様は、模様自体の相違に加え、配置態様の相違も相まって、需要者に異なる美感を与えているから、相違点(イ)が、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)について、色彩の有無は、オーナメント表面に様々な色彩を施したものがごく普通に見られるものであって、意匠上の特徴として大きく評価することはできないから、相違点(ウ)が、部分全体の美感に与える影響は小さい。
ウ 形状等の共通点及び相違点の総合評価
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ウ)は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものの、相違点(ア)及び相違点(イ)が両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が両部分の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。
【コメント】
原査定では、本願意匠の表面に配された「DREAM COMES TRUE」は専ら情報伝達のためだけに使用されている文字だとして、意匠を構成するものではないと判断されました。一方、審決では、当該文字部分を文字・数字模様と表現し、意匠を構成するものとして類否判断を行いました。本件物品がオーナメントであることからは、メッセージ性を伴う文字等模様は需要者の最も関心の高い部分であり、文字等模様における差異点が類否判断に与える影響は大きいと判断しました。
審査基準では、物品等に表された文字等は、専ら情報伝達のためだけに使用されているものを除き、意匠を構成するものとして扱う、とされていて、専ら情報伝達のためだけに使用されている文字等の例として、新聞、書籍の文章部分や、成分表示、使用説明などを普通の態様で表した文字が挙げられています。オーナメント表面のメッセージはこれらの例示のような、専ら情報伝達のためだけに使用されるものとはいえないと思いますし、デザインを構成するものという審決の判断は妥当なものだと思います。
※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。