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事例紹介

2025.01.17

不使用取消審判・社会通念上同一性について [弁理士 服部 京子]

不使用取消審判・社会通念上同一性について [弁理士 服部 京子]

不使用取消審判において判断された社会通念上同一性の部分に着目してご紹介します。

【種別】   商標取消の審決
【審判番号】 取消2022-300651

【本件商標】 
3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」

【使用商標】 
【適用条項】 50条1項
【結論】   本件審判の請求は、成り立たない。

本件商標について
「IMPRESS」の欧文字を書してなるものと容易に看取されるものであって、サンセリフ体の書体の一類型で表してなると理解されるものといえる。

使用商標について
ややデザイン化されているものの、「Impress」の欧文字を書してなるものと容易に看取されるものであって、セリフ体の書体の一類型で表してなると理解されるものといえる。

社会通念上同一性の判断について(下線は筆者、以下同様)
「impress」の文字は「印象を与える」等の意味を有する語であることから、本件商標と使用商標は、ともに「印象を与える」の観念及び「インプレス」の称呼を生じるものといえる。なお、登録商標は、それを付する商品(役務)の具体的な性状に応じ、適宜に変更を加えて使用するのがむしろ通常であるという産業界の実情を踏まえれば、使用商標におけるデザイン化は、商取引の実際において通常行われる範囲のものであって、本件商標の識別性に影響を与えない程度の態様の変更とみるのが相当である。

 そうすると、本件商標と使用商標とは、その綴りを同じくするものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標というのが相当である。

【種別】   商標取消の審決
【審判番号】 取消2022-300655
【本件商標】 

第3類「せっけん類,化粧品,香料類」

【使用商標】 
【適用条項】 50条1項
【結論】   本件審判の請求は、成り立たない。

本件商標について
「インプレス」の片仮名を書してなるものと容易に看取されるものであって、ゴシック体の書体の一類型で表してなると理解されるものといえる。

使用商標について
ややデザイン化されているものの、「Impress」の欧文字を書してなるものと容易に看取されるものであって、セリフ体の書体の一類型で表してなると理解されるものといえる。

社会通念上同一性の判断について
「impress」及び「インプレス」の文字は「印象を与える」等の意味を有する語であることから、本件商標と使用商標は、ともに「印象を与える」の観念及び「インプレス」の称呼を生じるものといえる。なお、登録商標は、それを付する商品(役務)の具体的な性状に応じ、適宜に変更を加えて使用するのがむしろ通常であるという産業界の実情を踏まえれば、使用商標におけるデザイン化は、商取引の実際において通常行われる範囲のものであって、本件商標の識別性に影響を与えない程度の態様の変更とみるのが相当である。

 そうすると、本件商標と使用商標とは、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標というのが相当である。

【種別】   商標取消の審決
【審判番号】 取消2023-300506
【本件商標】 
10類「CDによる音響波動を利用したマッサージ装置,医療用機械器具」
【使用商標】 CYMATICS
【適用条項】 50条1項
【結論】   本件審判の請求は、成り立たない。

本件商標について
「CYMATICS」の欧文字を上段に、「サイマティクス」の片仮名を下段に書してなるものである。

使用商標について
使用商品(「サイマドクター」)を販売するために、その営業活動で使用したパンフレット(乙1)には、「CYMATICS」の欧文字(以下「使用商標」という。)が付されている。

社会通念上同一性の判断について
使用商標と本件商標の上段とは「CYMATICS」の文字構成が同一である上、本件商標の下段の「サイマティクス」の文字は「CYMATICS」の欧文字の片仮名表記であり、かつ、「CYMATICS」の構成文字から生じる称呼を表したものであって、「CYMATICS」と「サイマティクス」とで観念が異なるような事情も見当たらないから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一であると認められる。

 社会通念上同一性に関しては、商標法38条5項(損害の額の推定等)においても規定されており、
「…その侵害が指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。第五十条において同じ。)の使用によるものであるときは
とされています。

 2つ目の事例はまさに片仮名とローマ字の文字の表示を相互に変更するものでこの規定に合致するものです。なかなか実際の事案に出会うことはないので今回ご紹介しました。

 もちろん、同一の称呼及び観念が生じるという前提がありますし、使用する商標を登録するのがいいのですが、もしもの際に覚えておくとよいかもしれません。

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