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豆知識

2025.02.17

商標Q&A 第17回 不使用取消審判とは何ですか?その1

商標Q&A 第17回 不使用取消審判とは何ですか?その1

Q: 使われていない商標について、商標登録を取り消す制度があると聞きました。どのような制度でしょうか。

A: 我が国における商標登録については、登録の日から3年以上が経過しており、かつ、その商標が3年以上一度も商標権者等により日本国内で使用されていない場合、誰でも、当該登録の取消を求める審判を請求することができます(商標法501項)。この審判のことを、一般に「不使用取消審判」といいます。

なぜ、そのような制度があるのか考えてみましょう。まず、ある商品について商売する際、「これは私が製造した商品ですよ」ということをお客様にわかってもらいたいですよね。そんな時、どうすればいいでしょう。手っ取り早いのは、その商品に「これ、私が作った商品なんです」と目印をつけることですよね。そうすると、その目印をみた人たちは、「あ、あの人の商品か〜」と分かってもらえます。その目印こそが「商標」なんですよね。商標の登録制度というものは、「この商品(サービス)にこの商標を使うから登録(独占)させてくれ」と申請し、無事に登録になれば、商標権という強力な独占権が付与されるという仕組みなんです。

つまり、国からすると、商品やサービスについて使うと言っているから独占させてあげているのに、一向に使わないのはどうなん?となるわけです。使われもしない商標の登録がどんどんと増えていくと、新しい商標を採択したい!と思って登録を申請(出願)した人がいたとしても、使われないまま山積みになっている他人の登録商標に似ているから登録は認められません、と言われてしまう可能性がどんどん増えちゃいます。これは良くないですよね。なので、使われていない商標については、これを消して欲しい!という人がいたら消しますよ、という制度が設けられている訳です。もう少し詳しく説明しましょう。

我が国の商標制度では、登録から3年間は使用に向けた準備期間として使用をしていなくても許される(取り消されない)のですが、3年を超えてもなお使用されていない登録商標については、誰か他の人が「その商標は使われていないみたいなので登録を消してください」と請求することで、登録が取り消されることになります。消されたくなければちゃんと登録した商標を指定した商品やサービスについて使用しておこうね、ということです。

この商標の不使用を理由とする登録取消審判は、商品・サービス単位で請求することができます。例えば、第18類「かばん類」、第25類「被服,履物」について登録している商標があるとしましょう。この商標に係る登録を消して欲しいと考える人は、全部の指定商品について取消を求めても良いですし、25類のうち「履物」だけを消してください、と請求することもできます。また、不使用取消審判を請求された商標権者は、請求された商品について、過去3年の間に登録商標を使用したことを示さなければ、その商標登録は取り消されてしまいます。

ここで注意しなければならないのは、商標権者は、請求された商品すべてについて使用の証拠を提出する必要はなく、いずれか一つの商品について使用している旨の証明ができれば、商標登録は取り消されないという点です。例えば、登録商標の指定商品が第18類「かばん類」、第25類「被服,履物」であって、商標権者が第25類「靴下」(被服の下位概念)についてしか使用していない場合を考えてみましょう。この登録に対して、全部の指定商品を消して欲しい、という審判が請求された場合、商標権者は「靴下について使っていますよ」と証明することで、すべての指定商品について登録を守ることができます(取り消されません)。一方、この登録に対して、第18類「かばん類」を消して欲しい、という審判が請求された場合、商標権者はかばん類の使用実績がありませんので、請求された商品(かばん類)についての登録商標の使用を立証できず、その結果、第18類「かばん類」に係る登録は取り消されることになります(一方、取消を請求されていない第25類の指定商品に係る登録は残ります)。お分かりいただけましたでしょうか。

この不使用取消審判というのは、登録商標と実際に商品等に使用されている商標とが同じものであるかどうか、というところがよく争われます。例えば、登録されている商標が「図形+ABC」であるのに、商標権者が使用しているのは単に「ABC」だけの場合、果たしてこれは「登録商標を使用している」と言えるのかどうか、ここがポイントになってきます。その辺りが実務的にはとても重要なのですが、長くなりますので、次回、改めて解説しようと思います。お楽しみに!

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