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豆知識

2025.01.17

商標Q&A 第16回 類似群コードの留意点

商標Q&A 第16回 類似群コードの留意点

Q: 「類似群コード」の留意点について教えてください。

A: 前回は類似群コードとは何か、という基本的なことについてお話をさせていただきました。今回はその留意点についてみていくことにしましょう。

 まず、おさらいです。類似群コードが共通している商品・役務同士は類似である、類似群コードが異なる商品・役務同士は非類似である、というように類似商品・役務審査基準で定められているのでしたね。

 ここで注意したいのは、これら商品・役務の類否は、類似群コードによって類似・非類似であると常に「みなされて」いるわけではなく、あくまでも「推定」されているにすぎません。審査基準に基づいて、商品・役務が類似・非類似であるとの前提のもとで審査が行われるものの、かかる類否の推定に対しては反論が可能である、ということです。ただ、出願人や異議申立人などの主張によって簡単に商品・役務の類否を覆してしまいますと、審査基準が形骸化してしまいますから、そう簡単には類似群コードによる類否の推定は覆りません。審判段階ならまだしも、審査段階でこの「推定」を覆すのはなかなかに至難の業です。

 また、類似群コードには例外もあります。類似群コードが異なる場合は非類似であると推定されるのが原則ですが、商品や役務の中には、「類似群コードが異なるけれども類似と推定する」とされているものがあります。これは類似商品・役務審査基準の「備考」欄に特記されている事項となりますので、「備考類似」と呼ばれています。例えば、昔ながらのフィルムを用いたカメラなどは「写真機械器具」という概念に属する商品でして、類似群コード10B01が付与されています。一方、「デジタルカメラ」については、テレビやCDプレイヤー、携帯電話、ビデオカメラなどが含まれる「電気通信機械器具」という概念に属する商品とされており、類似群コード11B01が付与されています。そうなりますと、昔ながらの銀塩の「カメラ」は10B01、「デジタルカメラ」は11B01ということで、類似群コードが異なるから非類似の商品なのか、と思われるかもしれませんが、審査基準の備考欄をみると、「『デジタルカメラ』は、『写真機械器具』に類似と推定する。」と記載されています。そのため、類似群コードは異なるものの、例外的に、デジカメと銀塩カメラは類似と推定される、ということになります。これが「備考類似」と呼ばれる例外規定になります。

 この備考類似ですが、重要な留意点があります。それは、「現在のところ、審査段階では、備考類似を考慮せずに審査が行われる」という点です。どういうことかといいますと、商品「写真機械器具」について商標「いろは」がA社により登録されており、その後、B社が商品「デジタルカメラ」について同一の商標「いろは」を出願した場合、デジタルカメラと写真機械器具は備考類似の関係であるにもかかわらず、B社の商標出願に対してA社の先行商標が引例に挙げられることなく、登録査定がなされます。ところが、審査中の段階でA社からB社出願に対して刊行物等提出手続(いわゆる情報提供)がなされたり、登録後に異議申立や無効審判請求がなされたりした場合においては、備考類似の規定が考慮され、B社の商標は拒絶/取消/無効となることになります。このように、備考類似には審査官が自発的に審査をしてくれないという怖さがあるため、出願前の調査においてしっかりと出願人自身が自己責任でチェックをしておかなければなりません。

 さて、もう一つの例外として、「仮類似群コード」というものがあります。これは暫定的に設けられた「その他」の商品・役務に関する類似群コードでして、例えば、産業機械という分野に属する商品のうち、金属加工機械器具は09A01、土木機械器具は09A03、化学機械器具は09A06…というように細かく類似群コードが付与されているのですが、どこにも属しそうにない産業機械は、「その他の産業機械器具に該当するもの」として、09A99という仮類似群コードが付与されます。ここには様々な商品が雑多に放り込まれますので、たとえ09A99というコードが共通するとしても、互いに類似するとは限りません。そのため、この「仮類似群コード」が付与された商品・役務については、「類似群コードが共通するものは類似と推定する」という原則が通用せず、例外的に個別・具体的な類否判断がなされることになります。

 最期に、複数の類似群コードが付されている商品や役務に対する考え方について述べておきましょう。商品・役務には常に1つだけの類似群コードが付されるとは限らず、2以上の類似群コードが付される商品や役務も存在します。この場合、すべての類似群コードが一致する商品等同士だけが類似すると推定される訳ではなく、いずれか一つだけでも類似群コードが共通する商品等同士は類似と推定されます。例えば、商品「スマートフォン」は、電話の機能とコンピュータの機能を併せもつものであるため、電話の類似群コードである11B01と、コンピュータの類似群コードである11C01という2つのコードが付与されます。この「スマートフォン」は、11B01である「電話」と類似と推定されると同時に、11C01である「コンピュータ」とも類似と推定される、ということになります。

他にも、様々な留意点やニース国際分類におけるアルファベティカルリストとの関係、類似群コードの見直し等々、述べたいことは多くあるのですが、これらにつきましては、4月18日に開催いたします「とともも知財セミナー」にて詳しく解説させていただければと思います。みなさま、どうぞご参加くださいませ!

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