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事例紹介

2024.11.15

建築物の意匠の部分意匠 [弁理士 德永 弥生]

建築物の意匠の部分意匠 [弁理士 德永 弥生]

回は、建築物の意匠の部分意匠に関する審決をご紹介します。

【審判番号】 拒絶2023-016071
【結論】   本願の意匠は、登録すべきものとする。
【原査定における拒絶の理由】 意匠法第3条第2項(創作容易)
【本願意匠】(意匠に係る建築物「住宅」/部分意匠)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【引用意匠1】

 

 

 

 

 

 

 

【引用ウェブページ1】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【当審の判断】
3 本願意匠の創作性の検討
 この種、建築物の分野において、住宅内部の壁を、略縦長長方形の羽目板を用いた板張りとしたものが、本願の出願前から公然知られているものであり(意匠1)、また、住宅のフローリングの板張りについて、幅が異なる3種類の羽目板をランダムに並べたものも、本願の出願前から公然知られているものである(引用ウェブページ1)。

 しかしながら、本願部分のように、壁面の略横長長方形の範囲において、両側に細幅の余地を残して上下いっぱいに、横幅の異なる3種類の略縦長長方形の面を、右端から太幅、中幅、細幅の順番で、順繰りに11面並べたものは、本願部分の他には見られないものであるから、本願部分は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。

 そうすると、本願意匠は、この建築物の属する分野において、独自の着想によって創出したものであり、当業者が引用意匠に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

【コメント】
 本願意匠は、住宅内部の壁の一部を建築物の意匠の部分意匠として出願されたものです。縦長長方形の羽目板を並べた壁で、羽目板の幅が太い→中くらい→細いという順番で繰り返し並べられたものの一部分が、意匠登録を受けようとする部分として特定されています。

 創作容易の理由に挙げられた引用意匠は、一つは縦長長方形の羽目板を並べた壁の一部であり、それにもう一つの、羽目板の太さが太い、中くらい、細いが組み合わされた床板を組み合わせれば、本願意匠は容易に創作できるとされました。

 審決では、引用意匠では太さの違う羽目板が「ランダムに」並べられているのに対し、本願意匠は太い→中くらい→細いで順繰りに並べられている点において、本願意匠には引用意匠にない創作性があると判断されました。

 審決の内容からは離れてしまうお話なのですが、本件は建築物の意匠の部分意匠として出願されていますが、これを内装の意匠の部分意匠として出願することもできるかもしれません。内装の意匠の場合、複数の物品等から構成されたものである必要がありますので、大きさ等の異なる複数の羽目板を組み合わせたものとすれば、内装の意匠でも出願ができそうです。(そういった内装の意匠の登録例があります。)建築物と内装の意匠は互いに類似する可能性がありますし、どちらの方法でも出願ができる場合がありますので、意匠のどの部分が重要で守りたい点なのか(組み合わせなのか、形状自体なのか)、しっかり検討して出願方法を決める必要があると考えます。

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