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事例紹介
2024.09.15
審決取消訴訟事件(意匠法5条2号) [弁理士 德永 弥生]
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令和5年(行ケ)第10113号 審決取消請求事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/792/092792_hanrei.pdf
原告(無効審判被請求人):トムズアンドコレクティブ株式会社
被告(同請求人):エルメス・アンテルナショナル
■事件の概要
本件は、原告の意匠登録を無効とした審決に対する審決取消訴訟です。
審決では、原告の登録意匠(本件登録意匠)は、被告の登録商標(H商標2)との関係において、他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠であり、意匠法5条2号に該当するとして、無効と判断されました。
裁判所は、当該無効理由には理由があるとして、原告の請求を棄却しました。
(本件登録意匠/意匠登録第1606558号)
(本件南京錠)※本件登録意匠正面の南京錠部分
(H商標2/商標登録第5864813号)指定商品:かばん金具等
■本件審決の要旨
「(3) 無効理由3(H商標2との関係における意匠法5条2号該当性)について
ア本件南京錠については、H商標2との相違点(①中央の横溝の本数、②H商標2の中央ほか4か所の面取り模様、③左・中央・右各部分の幅の比率)はいずれも大きな相違ではなく、H商標2の態様の特徴を備えているといえる。
イH商標2は、被告の出所を表示する標章として著名であり、この点は原告も認めている。
ウ 被告は、「カデナ」と呼ばれる留め具をハンドバッグ等に付して販売しており、H商標2はこのカデナに表示されている標章である。
エ本件意匠に係る物品は「かばん」であり、被告の業務に係る物品分野との関連性が非常に高い。
オ したがって、本件南京錠を有する本件登録意匠は、被告の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある。」
■裁判所の判断
「原告は、本件南京錠は本件登録意匠の要旨ではなく、意匠の要部を構成しない旨主張する。
しかし、本件登録意匠は、別紙意匠公報のとおり、本件南京錠を付したものとして登録されているのであるから、他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれ(意匠法5条2号)があるか否かについて、登録された意匠の形状等のうち、特に他人の周知・著名な商標に類似する部分が問題となることは当然であり、この点は、意匠同士の類否(同法3条1項3号)等の判断に当たって考慮される意匠の「要部」であるか否かとは別問題であるから、原告の主張は失当である。」
本件の無効審判では、本件裁判の被告であるエルメスは、被告の著名な商品である「バーキン」の立体的形状との混同のおそれも無効理由として主張しましたが、本件登録意匠の形態はバーキン商標の特徴をそのまま備えているということはできず、バーキン商標とは大きく異なるとして、バーキン商標との関係においては混同を生ずるおそれがあるとはいえないと判断されました。
(商標登録第5438059号)
一方で、上記審決の要旨の通り、本件登録意匠の正面に付された南京錠によって、本件登録意匠は、被告がカデナと呼ばれる南京錠に関して登録していた図形商標との関係において、被告の業務に係る物品と混同を生じるおそれのある意匠であると判断されました。
以上



