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豆知識

2024.07.17

商標Q&A 第10回 自他商品役務識別力とは何ですか?

商標Q&A 第10回  自他商品役務識別力とは何ですか?

Q:商標登録を行おうと思い、知り合いの弁理士さんに登録性の調査をお願いしたところ、「この商標は、指定商品との関係において自他商品識別力が極めて弱いと思われますので、登録は難しいと判断します」と言われました。識別力って何なのですか。

A:商標を登録してもらうには、3つの条件(要件)をクリアする必要がある、というお話を第6回(20243月号)でさせていただきました。今回お尋ね頂いている「自他商品役務識別力」が備わっていること、というのはその条件のうちの1つ目にあたります。今回は、その識別力にスポットを当てて解説していきましょう。

 さて、商標は「これは私が製造した商品/提供するサービスですよ」ということを、その商品やサービスの取引者・需要者にわかってもらうための「目印」でしたよね。ですから、市場において多くの事業者が提供する同種の商品やサービスが混在する中で、「あ、このマーク(目印)がついているから、これはAさんの商品だな」、「おや、このマーク(目印)ということは…Bさんの商品か」、というように、「誰の商品/サービスであるかを需要者等が識別できる目印」であることが重要になります。ですので、商品に付しても「誰が作った商品なのか」を識別できないようなマーク(目印)は、商標として登録しませんよ、というルールになっているんですね。これこそが「識別力」という概念になります。

 では、具体的に、商標法にどう書かれているかをみてみましょう。商標法3条には、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標を除き、商標登録を受けることができる。」と規定されています(商標法3条1項柱書、同6号)。ここでは「識別」の言葉をつかわず「認識」という言葉が使われていますが、「そのマークをみても誰の商品・サービスか分からない場合」とイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

 でも、これだけだと「識別力のない商標」って何なのかイメージがつきにくいですよね。商標法では、こういうものが識別力を発揮できませんよ、と具体的に5つの例を挙げています。

① その商品やサービス(以下、商品等)の普通名称(略称・俗称含む)

② その商品等の慣用商標

③ その商品等の品質や質などの記述的な表示(産地、販売地、提供場所など含む)

④ ありふれた氏(名字)または名称(商号・屋号)

⑤ 極めて簡単で、かつ、ありふれた商標(数字、ローマ字1字or2字、単なる円など)

 よく、「日常的に使う言葉」や「辞書に載っている言葉」は造語じゃないから識別力がない=登録できないですよね?と聞かれるのですが、違います。ポイントは、上記①〜③に書かれた「その商品等」という文字になります。この原稿はApple社のリンゴマークがついたMacBookで書いていますが、Appleという英語もリンゴのイラストも、誰もが知っている「リンゴ」という果物を表したものです。では、これらは商標登録できないのでしょうか。いいえ、商品によっては登録できてしまいます。確かに果物の「リンゴ」については普通名称ですからAppleの文字は商標として登録できませんが、「パソコン」については普通名称でもなんでもないですから、商標として登録できてしまうんですよね。イメージがつきましたでしょうか。

 ただ、普通名称などと違って、その商品の品質や特徴を表す文字かどうかとなりますと識別力を有するか否かの判断がとても難しく、特許庁が公開している商標審査基準の記載や、審決の説示、審査例、過去の実務経験、印刷物上での掲載例、ネット上での使用例などを考慮しつつ検討していく必要があります。弊所は随時「識別力」の調査やセカンドオピニオンを承っておりますので、お気軽にご相談下さいませ。

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