TRADE MARK TOPICS 商標お役立ち情報
豆知識
2025.05.15
【商標Q&A 第20回:不正使用取消審判とは何ですか?】
Q: 私達が昔から使用している商標「いろは」と紛らわしい商標「IROHA JAPAN」が他人によって同じ分野に出願されたのですが、特許庁では似ていないと判断されてしまい、当該他人の商標は登録になってしまいました。登録後、その商標は「IROHA」と大きく書した下に小さく「JAPAN」と併記されて使用されているため、とても紛らわしく、実際にお客さんからも私達の商品だと勘違いして買ってしまったという苦情が寄せられています。何とかなりませんか?
A: 何とかなるかもしれません。具体的には、民事訴訟(商標権侵害等)で争えることに加えて、対特許庁という観点でいうと、いわゆる「不正使用取消審判」というもので当該他人の商標登録の有効性を争う余地があります。このような事案では、特許庁に対して当該他人の商標登録の取消を求める行政的アクションを起こすと同時に、相手側に対して警告や訴訟の提起など、民事的なアクションも並行して起こすことが重要になります。よく、民事的なアクションを全くとらずに特許庁での戦いに終始している事案を目にしますが、得策とは思えません。
民事的なアクションについてはまた後日解説させていただくとして、今回は特許庁に対してどのようなアクションを取り得るのか、その点にフォーカスして解説してみましょう。前回までは、登録商標を使用していない場合における、いわゆる「不使用取消審判」という商標登録の取消制度をみてきましたが、本件では、この他人さんは登録商標「IROHA JAPAN」と社会通念上同一と考えられる「IROHA/JAPAN」という二段書き商標を使用していますので、不使用を理由とする(登録商標そのものを使用していないという理由による)取消審判で勝つのは難しいといえます。また、異議申立や無効審判で「商標が似ているじゃないか、当該他人の商標は登録されるべきではなかった」と主張しようにも、当該他人の登録に係る商標は紛らわしい二段書きではなく、一連にまとまりよく書された「IROHA JAPAN」という商標であるため、相談者商標「いろは」とは抵触しない(特許庁の登録査定に瑕疵はなかった)、との判断がなされることも充分に考えられ、一筋縄ではいきません。
となると、異議、無効、不使用取消、全てが封じられて打つ手なしか…と考えがちですが、そうではありません。商標法51条では、「商標権者が故意に指定商品…についての登録商標に類似する商標の使用…であって他人の業務に係る商品…と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定されており、まさに本件が当該規定に該当し得ます。すなわち、他人(商標権者)の登録商標は「IROHA JAPAN」という一連の商標でありながら、相談者の「いろは」という有名な(顧客吸引力のある)商標にすり寄る意図をもって、「IROHA JAPAN」に類似する「IROHA/JAPAN」という商標を故意に使用し、結果、相談者の業務に係る商品と混同を生じさせておりますので、この点を丁寧に主張立証していくことで、当該他人の商標登録を取り消す余地が生まれます。なお、この51条取消審判は「商標権者」自身が不正に登録商標に類似する商標を使用する場合が規定されていますが、商標権者が自分自身ではなく他人にライセンシングして使わせている場合であっても、同様に不正使用を理由とする取消審判の対象となります(53条)。
この不正使用取消審判は実務上大変重要なのですが、請求件数がとても少なく、我が国において充分に活用されているとはいえない状況です。模倣品に悩まされている企業などにとってはとても有用な規定ですので、ぜひ覚えておいてください。このような事案で悩まれていることがありましたら、お気軽に弊所までご相談いただければと思います。
※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。