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豆知識

2024.08.19

商標Q&A 第11回 海外でも商標を使いたい場合はどうすべき?その1

商標Q&A 第11回  海外でも商標を使いたい場合はどうすべき?その1

Q:20代の女性をターゲットにしたアパレルブランド「イロハ」を展開しておりますところ、欧州の知人から、パリの展示会に出品しないか?というお声がけをいただきました。また、米国からも当社のアパレルを取り扱いたいとの問い合わせを受けています。日本では「イロハ」について商標登録を行っていますが、今後、海外にも商品を展開していくにあたって、どういう点に注意すべきでしょうか。

A:まず、商標登録云々の話よりも、既存のアパレルブランドを欧州や北米で展開していく上で、「イロハ」という日本のカタカナ文字が、果たしてブランドの目印たる「商標」として適当なのかどうかを検討する必要があります。

 「カタカナを使ったら日本発のブランドだとわかってもらいやすいから、このままで展開したい」というご相談をいただくこともあります。でも、考えてみてください。例えば中東のブランドが初めて日本に入ってきて、その商品にアラビア文字が書いていたら「ああ、アラブ諸国のブランド商品なんだな」と日本の需要者は感じるでしょうけど、では、その需要者はそのブランドの商品をどう注文したらよいのでしょう。また、店で直接買ったとしても、それを気に入って再度ネット注文をしようと思っても、日本の一般的な需要者はアラビア文字を打てませんから、ネットで検索する方法がありません。日本の需要者にブランドの広告を打とうと思っても、アラビア文字だと読み方すら理解してもらえません。

 このように、「これが私達のブランドの商品ですよ」とユーザーにわかってもらうために付けるはずの商標が、その現地の人に「理解してもらえない」「読んでもらえない」というのは、根本的なところで致命的であることが分かっていただけましたでしょうか。「いやいや、カタカナの「イロハ」は読めないだろうから、ちゃんと「ILOHA」というローマ字も使うつもりだよ」とお考えの方もいらっしゃると思います。はい、その場合は、フランス人や米国人にとって、より重要なブランドの目印(商品購買の手がかりとなる文字)たる商標は、「イロハ」というよりも「ILOHA」ということになります。

 日本だけで商売をする場合は、日本のマーケットだけを考え、そのブランドがメインターゲットとする需要者(いわゆるペルソナ)を想定したデザインやネーミングを行えば良いのですが、海外に展開するとなると、日本以外のマーケットにおける特定需要者にどうブランドを訴求していくか、ということを考える必要がでてきます。ただ、フランス向け、米国向け、中国向け・・・というように、それぞれの国においてきめ細やかなブランディングをすることは現実的ではありませんので、最大公約数的に、意図する国々において問題のないデザインやネーミングなどをしっかりと策定した上で、展開していく必要がでてきます。

 本件の場合、もちろん「イロハ」というカタカナのロゴを活かしつつ欧州と北米に展開するのでも構いませんが、世界共通のブランドネームとして、これからは「ILOHA」というローマ字の商標を全面に押し出して行こう!と決めたとします。さぁ、ここからいよいよ弁理士の職域といいますか、どう国内外で商標を登録していくか、、、という話に入っていくのですが、長くなりますので、その話はまた次回以降といたしましょう。今回はその前段階として、「日本のブランドを海外展開する前に、本当に既存のブランド要素(デザインやネーミング等)のままで事業を進めてよいのか、一度見直すことも大切ですよ」というお話をさせていただきました。

 弊所にはブランディングの知識を有するブランド・マネージャー認定資格者も複数在籍しております。「ブランディングなんて難しそう」「今までちゃんと考えたことなかった」「ちょっと気になる、話を聞いてもらいたい」という方、どうぞお気軽にご相談くださいませ。

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