TRADE MARK TOPICS 商標お役立ち情報
豆知識
2026.04.15
【商標Q&A 第30回:十字(クロス)図形って登録可能ですか】
Q: 当社は、医療関係のグッズを製造販売しています。需要者に安心して使ってもらえるブランドを目指しており、医療関係でよく目にする十字(クロス)図形を一部に取り込んだロゴマークをブランドの商標として採択しようかと考えています。留意点などありますでしょうか。
A: 医療関係の十字(クロス)といえば、赤十字(白地に十字)が有名ですよね。また、安心感を与える十字(クロス)といえば、工事現場などで「安全」「第一」などとともに見かける緑十字(白地に十字)もありますし、永世中立国としてのイメージが強いスイスの国旗は赤字に白十字です。そのため、商標の一部に安心安全中立といったポジティブなイメージがある十字(クロス)図形を用いたい、というご相談はしばしばお受けすることがあります。ただ、少しばかり留意も必要です。
まずは赤十字を意味する白地赤十字の図形。これはダメです。商標法4条1項4号の不登録事由において、「赤十字の標章…と同一又は類似の商標」は商標登録を受けることができない旨、明確に規定されています。類似の商標もアウトですので、例えば「赤」十字ではなく「ピンク」十字として色を変えたり、十字の周りに文字を円周上に配したりしたような以下の図形も、赤十字の標章に類似するものとして登録が拒絶されています。

また、以下の各商標は商標の一部に赤い十字(クロス)図形を小さく配したに過ぎませんが、赤十字の標章に類似するとして一旦は拒絶査定となっています(いずれも不服審判を経て登録に至っています)。
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「+」(プラス)図形は商標の構成要素として頻繁に用いられるものですが、これを赤く塗ってしまうと、プラスではなく「白地に赤十字(クロス)」となってしまい、たちまち4条1項4号マターとなってしまいますので、注意が必要です。
では、逆に赤地に白十字(クロス)はどうでしょうか?赤地白十字はスイスの国旗ですから…そうです、当Q&Aの第27回で取り上げました通り、国旗と同一類似の商標も不登録事由に該当するとして拒絶の対象になるのですよね。また、国旗を商標として使用すると不正競争防止法違反にもなりますので注意が必要です。例えば、以下のような商標も、スイス国旗に類似するとして、4条1項1号違反で登録が拒絶されています。

悩ましいのは工事現場などで「安全」「第一」などの文字と共にみかける緑十字ですが…こちらは4条1項1号(スイス国旗)や同4号(赤十字標章)のように不登録事由として具体的に明示されていませんので、登録の余地があります。とはいえ、拒絶される可能性も残ります。いわゆる「緑十字」はJISに規定される安全標識(Z9103-1986)でして、白地に緑十字は安全指導標識、緑地に白十字は衛生指導標識として定められています。一方、ある程度知られている公益性の高い標識や標章などについては、これに類似する商標の私的独占は公序良俗に反する(4条1項7号)として拒絶される場合があります。例えば、過去では〒(郵便)マークに似ている商標や、飛行場を示す飛行機図形(JIS標章)に似ている商標が公序良俗違反として拒絶査定になった例もあり(いずれも不服審判を経て登録)、指定商品や役務との関係においては、緑十字についても公益的不登録事由によって拒絶される可能性が否定できないところかと感じます。また、例えば指定役務が工事関連であるような場合における緑十字そのものなどは、自他役務識別力を有しないとして拒絶されることも考えられますね。
では、赤系や緑系以外の十字図形はどうかというと…単純に白地に黒十字の「+」のみからなる商標は、単なる四則計算記号であるとして、3条1項5号(極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標)に該当するとして拒絶されている事案もあります。ただし、プラス記号が常に識別力を有しないかといえばそうともいえず、反論の余地はあろうかと思います。また、他に識別性を発揮し得る要素が含まれていれば、公益性の観点からは登録性につき問題ありません。
このように、十字(クロス、プラス)図形というのは、登録性の判断が難しく、実はちょっとした知財担当者泣かせな商標だったりします。判断に悩むことがあれば、ぜひお気軽に弊所へお問い合わせください。
※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。