TRADE MARK TOPICS 商標お役立ち情報
事例紹介
2025.10.15
4条1項16号と3条2項 [弁理士 島田 尚子]
商標法第4条第1項第16号該当による拒絶査定不服審判に関する審決をご紹介します。
【種別】 拒絶査定不服の審決
【審判番号】 不服2024-17255
【審判請求日】 令和6年10月29日
【確定日】 令和7年7月28日
【対象出願】 商願2023-74804
【請求人】 株式会社ロッテ
【種別】第30類
【指定商品】「ガーナ共和国産の又はガーナ共和国産の原材料を使用した菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),チョコレート」
【商標】「グリーンガーナ」(標準文字)
【結論】本願商標は、登録すべきものとする。
【当審の判断(抜粋)】
本願商標は、「グリーンガーナ」の文字を標準文字で表してなるところ、これは、「緑。緑色。」などを意味する「グリーン」の語と、一般的には「西アフリカ、ギニア湾岸の共和国。」(ガーナ共和国)を意味すると解される「ガーナ」の語とを結合したものと、容易に理解できるものである(出典:「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)。
そして、本願の指定商品は、別掲のとおり補正された結果、「チョコレート」以外の指定商品は、いずれも「ガーナ共和国産の又はガーナ共和国産の原材料を使用した」商品に限定され、商品の品質について誤認を生ずるおそれはなくなった。 また、上記5(2)にある請求人主張の審決や、請求人提出の資料(甲第1号証ないし甲第31号証)からすれば、「Ghana」の文字は、商品「チョコレート」との関係においては、請求人の業務に係る商品 を表示する商標(ブランド)として、我が国において長年使用され、需要者に相当程度広く認識されているものといえる。そして、請求人提出の資料(同上)によれば、当該「Ghana」を「ガーナ」と片仮名で表記し、広告宣伝されている場合も少なくないことからすれば、本願商標構成中の「ガーナ」の文字は、商 品「チョコレート」との関係においては、当該「Ghana」を片仮名で表記したものと認識される場合も少なくないというのが相当である。そうとすると、本願商標を指定商品「チョコレート」に使用するときは、これに接する需要者が、その構成中の「ガーナ」の文字より、その商品が「ガーナ共和国産の又はガーナ共和国産の原材料を使用した」商品であると認識するというよりは、「請求人の業務に係る「チョコレート」のブランド」を想起する蓋然性が高いといえるものである。 以上のことからすると、本願商標は、これをその補正後の指定商品について使用しても、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるとはいえない。
【コメント】
株式会社ロッテが出願した商標「グリーンガーナ」(標準文字)について、商願2023-074804の拒絶査定不服審判(不服2024-17255)において、原査定は取り消され、商標登録が認められました。 審査段階では、出願人は意見書を提出し、本願商標からは「ガーナ」の文字が分離して認識されることはないばかりか、仮に分離されたとしても「Ghana」の文字からなる商標については3条2項の適用を受けて登録取得していることから、当該文字は本願出願人の業務に係る商品であると一義的に把握されると考えられ、本願商標「ガーナ」を、その指定商品中の「ガーナ共和国産の商品」又は「ガーナ共和国産の原材料を使用した商品」以外の商品について使用した場合に商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるとするのは妥当ではない旨を反論しました。
しかし、3条2項の適用を受けた英語の、金色でわずかに陰影をつけ、ややデザイン化した書体の「Ghana」とカタカナの「ガーナ」は同一視できず、加えてその対象とされた商品は「チョコレート」のみであることから、チョコレート以外の商品を指定商品に含む本願を同様に判断することも当然できないとして、審査官の判断は覆らず拒絶査定となりました。
その後、審判段階においても審尋にて同様の暫定的見解が示された結果、出願人はチョコレート以外の商品については、「ガーナ共和国産の又はガーナ共和国産の原材料を使用した」商品に限定し、また、「チョコレート」については、カタカナの「ガーナ」が英語の「Ghana」と同時に使用されている状況などを詳述し、カタカナの「ガーナ」も「Ghana」同様に出願人のブランドを指すものと広く需要者に認識され ているとして、「ガーナ共和国産の又はガーナ共和国産の原材料を使用した」チョコレート以外のチョコレートとの関係において品質誤認を生じない旨を主張し、「ガーナ共和国産の又はガーナ共和国産の原材料を使用した」との限定は行いませんでした。
結果、審決においては、審判官はカタカナの「ガーナ」の文字についても、ブランドとしての認識が優先されると認め、「チョコレート」については「ガーナ共和国産の又はガーナ共和国産の原材料を使用した」との限定がない補正後の指定商品でも品質誤認のおそれがないと判断されました。
「チョコレート」については、限定的な表現を追加せずに死守したあたりに、老舗チョコレートブランドとしての底力を感じます。しかし、このように取得に苦労した商標であっても、如何なる理由かは不明ですが、2025年現在「グリーンガーナ」は販売終了となっており、商標弁理士としては悲哀を感じる次第です。
※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。