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豆知識

2025.07.15

【商標Q&A 第22回:商標登録の無効の審判とは何ですか】

【商標Q&A 第22回:商標登録の無効の審判とは何ですか】

Q: 当社では以前から「いろは」という食品を販売しており、当該「いろは」について商標登録を行っているのですが、最近になって他社が「IROHA JAPAN」という食品を販売し始めたことに気づきました。調べてみると、当該他社名義で出願された「IROHA JAPAN」という商標が半年ほど前に登録に至っておりまして、すでに登録異議の申立て期間は過ぎているようでした。異議可能期間中に当該他社の商標が登録されたことに気づけば良かったのですが…今からこの商標登録に異を唱えることはできないものでしょうか。

A: 今からでも異を唱えることは可能です。本件は同種商品についてまぎらわしい商標を後発他社がぶつけてきておりますので、商標権侵害を理由とする警告&訴訟等を行うことも考えられますが、相手側から「特許庁が非類似と判断したうえで登録を認めた商標を使用して何が悪いのだ」、という反論がくるでしょうから、警告等に並行して特許庁へ当該他社の登録商標(以下、他社商標といいます。)の有効性を争うアクションを起こすことが考えられます。

 シンプルに商標「いろは」(以下、本件商標といいます。)と他社商標「IROHA JAPAN」の類否を争うには、商標登録の無効を求める審判を請求することができます。こちらは無効にしたい商標が登録されてから5年間請求が可能ですので、本件ではまだ十分間に合う状況です。無効審判を請求するには利害関係が必要ですが、本件は類似商標を登録・使用されて実際に迷惑を被っていることから、利害関係が否定されることはありません。また、もし本件商標が有名で、他社商標が「IROHA Japan」のように紛らわしい態様で使用しているといった事情があるようなら、前々回(第20回)で取り上げた不正使用を理由とする取消審判を請求する余地もあるかもしれません。

 今回は前者の無効審判についてみてみましょう。こちらは前回取り上げた登録異議の申立てと異なり、当事者対立構造をとりますので、請求人(商標を無効にしたい利害関係人)による主張と、それに対する被請求人(審判対象の商標を登録した商標権者)の主張を聞いた上で、審判官の合議体が登録を無効にすべきかどうかを判断します。登録異議の申立ては異議申立人の主張に対して商標権者に反論をさせることなく審判官の合議体が審査官の判断に瑕疵があったかどうかを判断しますので、「商標権者に主張させるかどうか」という点において異議と無効は大きく異なります。

 著名商標に対してフリーライドの意図をもった悪意出願商標が登録されたような場合、無効審判に対して商標権者が答弁を提出しないということもよくあり、そういう場合は請求人に有利な判断がなされやすくなります。また、一般的に、登録異議申立ての成功率(商標登録の取消率)よりも、無効審判請求の成功率(商標登録の無効率)のほうが高くなる傾向にあります。加えて、登録商標を潰したい申立人(請求人)側としては、申立の準備期間が短い異議よりも、しっかりと請求の準備期間が取れる無効審判のほうが充実した主張立証をやりやすい、という事情もあります。そのため、異議申立てが可能な期間であっても、事案によっては異議ではなく敢えて無効審判を請求することもあります。

 無効審判は原則として登録後5年が経過するまでは請求することができ(不正の目的をもって登録をうけた商標等はこの限りではありません)、商標が似ている/似ていないといった私益の抵触に関する無効審判は、その商標が登録された査定審決時に遡って登録性が判断されます。5年間いつでも無効審判を請求できるからといって審判を請求せずに放置していると、その間に相手側の商標についても使用による独自の信用が化体・蓄積されていきますから、一般的には登録から年数が経過すればするほど無効審判は成功しにくくなる傾向にあります。なお、私益ではなく公益に反することを理由とする無効理由の場合は、査定審決時に無効理由がなくとも、後発的に公益に反するようになったことを理由として無効審判を請求することができる場合もあります。識別力のない登録商標に対する無効審判については、査定審決時にすでに識別力がなかったことを証明できれば無効とすることができますが、登録後に後発的に識別力を喪失したような商標は、無効審判や取消審判でその登録を無効/取消とすることはできません(そのような商標の効力は商標法26条で制限されることになります)。過去に遡って識別力がなかったことを客観的に立証するのは骨が折れますから、識別力のない商標が登録されてしまったような場合は、時間が経ってから無効審判を請求するよりも、登録直後にサッと証拠を揃えて異議を申立てたほうが得策なように感じます。

 このように、登録異議の申立てと登録無効の審判は、申立/請求の可能な時期が異なるだけでなく、様々な点において違いがありますので、事案に応じて使い分けることが肝要です。異議の期間が過ぎてしまったけれども他人が紛らわしい登録商標を使ってきて困っている…というような方、お気軽に弊所までご相談くださいませ。

※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。

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