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豆知識

2025.06.15

【商標Q&A 第21回:登録異議の申立てとは何ですか】

【商標Q&A 第21回:登録異議の申立てとは何ですか】

Q: 私達の業界で、商品の品質を示す言葉として当たり前のように使われている文字が同業者の1社によって商標登録出願され、どうせ拒絶になるだろうと思っていたら登録になってしまって焦っています。私達の業界で、今後、その言葉は使えなくなるのでしょうか。また、特許庁が品質表示語にすぎない文字を商標として登録したことに対して異を唱えたいのですが、どうすればよいのでしょうか。

A: 我が国では、登録出願された商標が、願書で指定された商品やサービスとの関係において、商品の品質やサービスの質を表すにすぎない文字のみからなるような場合は、審査官によって、その登録は拒絶されることになります。ただ、審査官も万能ではありません。例えばその文字が、たとえ業界内で特定の品質を表示する文字として広く一般的に使用されているものであったとしても、一般的な国語辞典や専門用語辞典などに掲載されていないような場合は、品質表示語であることに気づかずにそのまま登録を認めてしまうこともあり得ます。

 そのような場合に、本当にその文字が業界内で商品の品質を示す文字として広く一般的に使用されているものであったとしても、商標登録が認められてしまったが故に一切使えなくなるのかという1つ目のご質問に対しては、「原則として使用して大丈夫です。ただし、争いにはなり得るため、後ほど説明する手続きなどで登録を潰しておきましょう。」という答えになります。品質表示語を使っても商標権侵害にならないという点は、商標法26条に規定される権利制限の話になりますが、こちらは2つ目の質問である「登録に対してどのように異を唱えることができるか」とは別の話になりますので、また日を改めて解説させていただくことにします。今回は、当該2つ目の質問にあるように、本来登録されるべきではなかった他人の商標登録に対して異を唱える手続きである、「登録異議の申立て」の制度に絞って解説することにしましょう。

 日本を含め、どの国においても広く一般公衆に登録の妥当性をみてもらうための機会として、異議申立て制度が存在します。ただ、登録をする前に「こういう商標について登録しますよ」と公告し、異議を申立ててもらうのが一般的であるのに対して(日本も以前はそうでした)、我が国では、登録をした後に「こういう商標について登録しましたよ」と公報に掲載し、それに対して異議を申立ててもらう制度を採用しています。ですので、「すでに登録されてしまったから、もう文句は言えないのか」とは思わないでくださいね。具体的には、商標が特許庁の原簿に設定登録されてから2週間ほどで登録内容が掲載された「商標公報」が発行されるのですが、この商標公報が発行されてから2ヶ月以内であれば、誰でも(利害関係など不要です)、「その登録商標は、こういう理由で登録されるべきものではない」という申立を行うことができます。これが「登録異議の申立て」という制度です。今回のご質問における場合も、審査官が知り得なかった業界事情の情報と共に、査定時において自他商品識別力を有しない品質表示語であったことを理由として、登録の取消を求める異議を申し立てることが可能です。

 なお、商標登録の有効性を争うもう一つの手続きとして、「商標登録の無効の審判」がありますが、この無効審判が請求人と商標権者(被請求人)の当事者対立構造(当事者双方が主張・立証を行い、それに対して審判合議体が判断を下す構造)を基本とするのと異なり、登録異議の申立ては、あくまでも特許庁が審査に瑕疵がなかったかどうかを改めて見直す手続きとなりますので、商標権者(被申立人)による答弁などは行われません。審判官の合議体が登録を取り消すための理由があると判断した場合のみ、商標権者に意見を述べる機会が与えられることになります。

 この違いから、どちらかといえば、登録異議の申立ては、備考類似関係に基づく先願先登録商標との抵触を理由とするものや、審査官が審査段階では知り得なかった業界事情等に基づく識別性欠如を理由とするものが適している一方で、当事者同士の争いである悪意出願などについては、相手側(商標権者)を戦いの場に引っ張り出せる無効審判のほうが適している場合が多いように感じます。

 また、登録異議の申立ては、「審査に瑕疵があったこと」、すなわち特許庁が行政処分について誤りを認めて是正する手続きとなるため、当事者双方の主張・立証に対して特許庁が中立的な立場で登録の無効性を判断する無効審判に比べて、どうしても成功率が低くなる傾向にあります。そのため、登録異議の申立てが可能な商標公報発行から2ヶ月以内であっても、あえて異議ではなく無効審判を選択する場合もあります。

 登録されたら困る商標が他人によって登録されてしまった場合は、お気軽に当所へご相談ください。異議で登録の取消を申し立てるべきか、審判で登録の無効を請求するべきか、状況に応じて最も適した手段をご提案させていただきます。

※本件記事の情報は、執筆時点で入手可能な法令・判例等に基づいて作成した一般的な解説です。最新の法令・判例と異なる場合や、個別の事案には必ずしも適合しない場合があります。具体的な対応が必要な場合は、弁理士にご相談いただくようお願いいたします。

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