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事例紹介

2023.03.15

「送風機付き照明器具」事件   [弁理士 德永 弥生]

「送風機付き照明器具」事件   [弁理士 德永 弥生]

令和2年(ワ)第10386号 意匠権侵害差止等請求事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/778/090778_hanrei.pdf

 令和4年6月に本件を原審とする控訴が棄却されました(令和3年(ネ)第2663号 意匠権侵害差止等請求控訴事件)。原審をご紹介していなかったため、今回ご紹介します。

■事件の概要
 本件は、意匠に係る物品を「送風機付き照明器具」とする意匠権を有する原告が、被告による被告商品の製造、販売行為に関し、被告商品の意匠は本件意匠に類似する等として、差止、廃棄、損害賠償等を請求した事案です。
 裁判所は、両意匠は類似しないとして、被告による被告商品の製造販売等は原告意匠権を侵害しないと判断しました。(本件は不競法でも争われましたが、同じく該当しないとの判断となりました。)

■裁判所の判断要旨
 原告商品は「送風機付き照明器具」であり、サーキュレーターとシーリングライトが一体化したものです。原告の従来の同種商品ではリビングや寝室が主な設置場所でしたが、より狭い空間に設置可能とするために小型化して開発されました。

 天井等に据え付けられるものであるため、その使用に際しては、需要者はその下方や斜め下方から上方に視線を向けて視認する機会が最も多くなります。そのため、原告意匠のうち需要者の注意を最も引く部分は、円筒状中空本体の下面部を中心としつつ、これに準じるものとしての側面部並びに支柱部を含めた部分と認定されました。

 そして、原告意匠と被告意匠を対比すると、その要部である下面部や側面部等における形状の差異点、すなわち、ライトとなる透光部の全体に占める厚み・直径の割合や、下面部のファンガードの形状・本数等が異なることから、総合的に考慮すると、原告意匠は全体的にすっきりとして洗練された印象を与えるのに対し、被告意匠は全体的に存在感を示しつつも、柔らかく安定感のある印象を与えるものであって、これらの印象がそれぞれの意匠全体に与える影響は強く、差異点は共通点を凌駕し、両意匠は美感を異にする非類似の意匠であると判断されました。

 ちなみに、被告商品は被告の有する意匠権(登録第1667995号)の実施品です。被告意匠の審査においては、原告意匠は参考文献とされただけでしたので、特許庁としては非類似と判断していました。

以上

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